NYジャイアンツが勝利!!3-1で地区単独首位に!!
今回は、2026年10月5日 NFL Week 4、ニューヨーク・ジャイアンツ(NYG)対アリゾナ・カーディナルス(ARI)の一戦を、LB(ラインバッカー)の目線でお伝えいたします。
試合はラストプレイでインターセプトリターンTDという劇的な幕切れで、36-24でジャイアンツの勝利でした。
目次
- 試合の見どころ
- 1Q
- 2Q
- 3Q
- 4Q
- 【今回のポイント】Emptyと「#3」
- 【戦術解説】
- ① Nabersへの25ヤードTD
- ② Johnsonへの11ヤードTD
- 2つのプレイから言えること
- 【裏側の景色】コーチは何を考えているか
- 【Coachingへの応用】
- おわりに
試合の見どころ
1Q
このクォーターは、まずはカーディナルズが外側のランで押し込みました。
ジャイアンツはエースEdgeのBrian BurnsがWeek 3でACL(前十字靭帯)を断裂してIR入りしており、カーディナルズオフェンスがその穴を狙ったのではないかと見ています。
Q1 13:15(2nd & 4、NYG 39ヤード)では、RB Jeremiyah Loveが左のエッジを駆け上がって16ヤードを獲得しました。それをWR Marvin HarrisonのTDにつなげます。
さらにQ1 3:12(1st & 10、NYG 22ヤード)には、RB Tyler Allgeierが左タックルの裏を突いて22ヤードのTDランを決めています。
この時点でスコアは14-3。ジャイアンツは3点に抑えられていました。
2Q
流れが動いたのは、このクォーターです。
Q2 14:04(2nd & 13、ARI 35ヤード)、LB Arvell Reeseが中央からブリッツをかけました。
ReeseはQB Jacoby Brissettの投げた腕に当たり、浮いたボールをCB Greg Newsome IIがインターセプトします!
Q2 4:36(3rd & 4、ARI 12ヤード)には、QB Jameis WinstonからWR Malachi Fieldsへの12ヤードTD。
これで14-12となりました。
なんとジャイアンツのオフェンスとして9クォーターぶりのTDで、Fieldsにとってはキャリア初のTDでもあります。(最近FG多かったもんな・・・。)
続くQ2 3:15(3rd & 2、ARI 35ヤード)では、DT Shelby Harrisがパスをはたき、Reeseがインターセプト!!そしてNYGのボールになります。
そしてQ2 2:28(2nd & 9、ARI 25ヤード)。
WinstonからMalik Nabersへの25ヤードTDで19-14と逆転しました。
3Q
後半に入るとQB Winstonのパスが乱れます。ブッダ・ベイカーにインターセプトを献上し、
その後もTDを決められ24-19とリードを奪い返されます。
パスを投げるたびに成功か失敗かドキドキする。まさにパスガチャWinston。傍から見ていると面白いのですが、身内となると話は別です。やはりWinstonではダメなのか・・・と思っていたら、
その直後のQ3 1:48(2nd & 10、ARI 11ヤード)。
WinstonからTE Theo Johnsonへの11ヤードTDが決まります!!
2ポイントコンバージョンも成功し、27-24と再びジャイアンツがリードしました。
4Q
Q4 15:00(3rd & 7、ARI 49ヤード)では、LB Tremaine EdmundsがBrissettを11ヤードのロスでサックし、ARIはパントになりました。
Q4 10:27(2nd & 12)にはEdge Abdul CarterがQBヒットを記録。
続く10:21の3rd & 12では5ヤードのショートパスに抑え、パントに追い込んでいます。
そして試合終盤。
Q4 0:22、DPI(パスインターフェアレンス)の反則で18ヤードを前進され、ARIはNYG 4ヤードまで進みました。この反則はCB Deonte Banksに対するものです。
Deonte Banksは2023年のドラフト1巡指名で活躍を期待されていましたが、これまでの活躍はサッパリ。とにかくプレイに波があり、タックリングの安定感にかけている選手です。
しかし、Q4 0:11(4th & Goal)。
BanksがWR Michael Wilsonへのスラントをアンダーカットしてインターセプト!!
そのまま98ヤードを返してTDとなり、36-24で試合が終わりました!!
「BANKS CLOSED ON SUNDAYS」→「日曜日は銀行が閉まっています」とはシャレてますね。笑
前半にARIのランで苦しんだジャイアンツでしたが、2試合連続最後はディフェンスが試合を締めました。
【今回のポイント】Emptyと「#3」
今回、私が特に注目したいのは、ジャイアンツの2本のTDです。
Nabersへの25ヤードTD。そしてJohnsonへの11ヤードTD。
どちらもEmptyから生まれたプレーとして見ることができます。
Emptyとは、バックフィールドにRBを置かず、5人のレシーバー(TEを含む)を横に広げるShotgunの体形です。
LBは普段、RBの動きをヒントにプレーを読みます。
「RBが右に動いたから、こっちかもしれない」
「このモーションなら、あのプレーかもしれない」
そういった情報が、Emptyでは少なくなります。その代わり、ディフェンスには別の問題が出てきます。
それが「#3」です。
#3は、サイドライン側から数えて3人目のレシーバーのことです。
片側に3人並ぶ形なら、いちばん内側のレシーバーにあたります。
Emptyでは、ディフェンスはこの#3に誰を付けるのかを決めなければなりません。
DBを付ければ、他の場所の人数が減ります。LBを付ければ、スピードや体の向きで不利になりやすい。
これがいわゆる「#3の問題」です。
そして今回の2本のTDを見ると、この問題が非常に分かりやすく出ています。
【戦術解説】
① Nabersへの25ヤードTD
Q2 2:28、2nd & 9、ARI 25ヤード
まずはMalik Nabersへの25ヤードTDです。
Shotgun Emptyで、エースWRのNabersがこのEmptyの#3の位置に入り、そこにLBが付いていけずTDとなりました。このTDでスコアは19-14となり、ジャイアンツが逆転しています。
ここで興味深いのが、QB Jameis Winstonの試合後コメントです。
WinstonはこのプレーについてOCのコールを”a great play call”と評価したうえで、
“Malik one-on-one with a backer”
という趣旨の話をしています。
Giants survive the full Jameis Winston experience, as QB says he’s ‘heating up’ – The Athletic
つまり、中央でMalik NabersがLBと1対1になることを理解していたわけです。
これは、今回の「#3の問題」を考えるうえで非常に重要だと思います。
今度はLBの目線で考えてみましょう。
#3のWRに付く相手が、Nabersのようなスピードのあるレシーバーに縦へ走られれば、遅れやすくなります。
つまり、
普段CBやSFがカバーしているようなエースWRを、インサイドLBがカバーしないといけないというミスマッチが発生していたのです。
もちろん、ディフェンス側にもそれに対するルールがあります。ただこのプレーは「Cover 2」(深いゾーンを2人のSafetyで守る形)で守っており、SFとSFの間のカバーが手薄となっていました。
そして、少なくともこのプレーでは、Winston自身が「LBとNabersの1対1」を歓迎していました。
ここにOCのMat Nagyの狙いがあったのではないか、と私は考えています。
② Johnsonへの11ヤードTD
Q3 1:48、2nd & 10、ARI 11ヤード
続いて、TE Theo Johnsonへの11ヤードTDです。
このTDで2ポイントコンバージョンも成功し、27-24と再びジャイアンツがリードしました。
私はこの場面もEmptyで、Johnsonが#3にセットし、LBが付いていったと見ています。
ここで気になったのが、LBが先ほどTDをとられたにもかかわらず、引き続き#3をカバーしていたことです。
Nabersのプレーでは、スピードのあるWRをLBがカバーすることが問題になりました。
その場合、ディフェンスのアジャストとしては「WRならDBがマッチアップする」という手段をとることができます。
一方、JohnsonはTEです。
なので「TEだったらLBがカバーできるよね」ということで、上記のアジャストが行われなかった可能性があります。
なお、LBが1対1でパスカバーをする際、ボールを探して顔を回す(マンターン)の瞬間にどうしても遅れます。
さらにTEは体が大きいことが多く、体で位置を取られると、より苦しくなります。
結果としてはWinstonのナイスパス、Johnsonのナイスキャッチにやられてしまったのはありますが、同じ形でTDに繋がりました。
例え同じ#3でも、そこに入る選手によってディフェンスに求められる仕事は変わります。一度成功したプレイを選手を変えてもう一度同じ穴を突くというOCのプレイコールが光ったシーンでした。
2つのプレイから言えること
NabersとJohnson。2人とも#3に入っています。
そして、そこにLBが付いていると考えると、攻撃側から見れば非常に面白い状況になります。
Nabersなら、スピードで勝負できます。
Johnsonなら、サイズやポジショニングで勝負できます。ランブロックもできるでしょう。
つまり、同じ「#3」という場所からでも、攻撃側は違う方法でLBを攻めることができます。
これが私が今回「#3の問題」と呼んでいる理由です。
ディフェンスとしては、「#3に誰を付けるか」を決めなければなりません。
しかし、その選択によって、攻撃側が次の問題を作ることができます。
そう考えると、2つのTDが同じ話としてつながってきます。
【裏側の景色】コーチは何を考えているか
ここからは、少し視点を変えてみます。
では、ARIのディフェンスコーチは、このEmptyに対して何を考えていたのでしょうか。
そのため、ここからは私の仮説です。まず考えられるのは、
「#3を誰が守るのか」という問題です。
DBを#3に付けるのか。LBを#3に付けるのか。
あるいは、#3をある程度見ながら、QBを見るゾーン系のルールにするのか。
どれを選んでも、メリットとデメリットがあります。
例えばLBを#3に付ければ、他の場所にDBを残すことができます。
一方で、Nabersのようなスピードのある選手とLBを1対1にするリスクがあります。
逆にDBを#3に付ければ、Nabersとのマッチアップは改善するかもしれません。
しかし、今度は別の場所に人数が足りなくなる可能性があります。
つまりEmptyは、「誰を守るか」ではなく、「誰を使って守るか」という問題をディフェンスに突きつけることができます。
ここで、今回の2本のTDを見ると、ジャイアンツはその選択を攻撃側から利用しているようにも見えます。
ただし、これが本当にジャイアンツのGame Planだったのかは分かりません。
OCのMatt Nagy本人が、この2プレーについて「#3のLBを狙った」と話している記事やインタビューは見つかりませんでした。したがって、「ジャイアンツは#3のLBを狙っていた」と断定することはできません。
しかし、
「Emptyで#3にLBが付く形ができる」
↓
「NabersやJohnsonをそこに配置する」
↓
「LBに難しいカバーをさせる」
という構造は、試合映像を見るうえで非常に面白い仮説だと思います。
そして、これこそがNFLの試合を見る楽しさの一つだと私は思っています。
答えがすべて分かっているわけではありません。
映像を見て、
「なぜここにこの選手がいるのか?」
「なぜ攻撃はここに選手を置いたのか?」
と考えていく。私はこういう見方がとても好きです。
【Coachingへの応用】
さて、ここからは現役選手やコーチの方向けの内容です。
この2つのプレーを自分の選手に見せるなら、私は次の3点を伝えます。
1. Assignment/Communication
対戦相手のディフェンスがEmptyに対峙しているビデオを観たとしましょう。
オフェンス視点では「#3は誰が付いている?」ということを考えます。
さらに、
「#3がWRなら?」
「#3がTEなら?」
「#3がRBなら?」
と、相手によってルールが変わるのかまで確認します。
単純に「Emptyだからこのカバー」ではなく、相手のPersonnelまで考えることが重要です。
そして、ディフェンス視点では「このEmptyに対してどのようにアジャストするとよいか?」ということを考えます。
2. Technique/Eyes
今度はDefenceの視点です。Manで#3に付くLBは、相手の腰を見て追いましょう。
そして、ボールを探すタイミングを決めておきます。
「ボールを見ろ」と言うだけではなく、
「いつ見るのか」
まで練習しておきたいところです。
オフェンスはパスを投げるタイミングを決めています。ある程度カバーができている時は、飛んでくるタイミングでボールを見ましょう。ただ、Nabersのようなスピードのある選手に対しては、最初からボールを見ようとすると、逆に相手に置いていかれる可能性があります。
まずは自分の仕事を遂行する。そのうえで、ボールに反応する。
この順番が重要だと思います。
3. Read/Pursuit
そしてもう一つ。
Emptyを見たときに、「自分は何を見るのか?」を明確にすることです。
#3を見るのか。QBを見るのか。ランの可能性を見るのか。
もちろん、すべてを意識する必要はあります。しかし、実際のプレーでは優先順位を決めなければなりません。
これは私がLBを指導するときにも非常に大切にしている部分です。
良いLBは、単純に足が速い選手ではありません。
自分が今、何を見るべきなのか、何をすべきかを理解している選手です。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
今回は、2026年NFL Week 4のジャイアンツ対カーディナルスから、Emptyに対するLBのカバーについて考えてみました。
特に注目したのが、「#3に誰を付けるのか」という問題です。
Nabersへの25ヤードTD。Johnsonへの11ヤードTD。
2つのプレーを並べてみると、Emptyは単純に「5人のレシーバーを広げるフォーメーション」ではないように見えてきます。
ディフェンスに、
「誰を付けますか?」
という質問をするフォーメーションです。
そして、その答えによって、攻撃側は次の問題を作ることができます。
Nabersのようなスピードで攻めるのか。
Johnsonのようなサイズで攻めるのか。
こうして考えていくと、NFLのプレーは「誰がキャッチしたか」だけではなく、その前にあるマッチアップやディフェンスのルールまで見えてきます。
次にEmptyを見るときは、ぜひ、
「#3は誰が付いている?」
という視点で見てみてください。それではまた次回をお楽しみに。



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