今回は、2026年NFL Week 4、49ers対Broncosから、George Kittleの56ydタッチダウンをご紹介します。
4Q残り2分25秒。49ersが17-14と3点リードした場面、自陣44ydからの2nd & 8で、QB Brock PurdyがTE Kittleへ短いスクリーンパスを投げると、そのまま56ydを走り切ってTDとなりました。
Kittleの走力はもちろん見事でしたが、私がAll-22で注目したのは、Kittleがボールをキャッチする前の駆け引きと、その後のブロックです。
まずはこちらのプレイ動画をご覧ください。
※今回紹介する公式X動画はSidelineアングルのみです。以下では、私が別途All-22のEnd Zoneアングルで確認した動きについても解説します。
試合の状況
49ersは前半を3-3で折り返すと、後半に入って得点を重ねました。4QにはChristian McCaffreyのランTDで17-6とリードを広げますが、BroncosもTDと2点コンバージョンを成功させ、17-14まで追い上げます。
残り2分台、3点差。49ersとしてはランで時計を進めたい場面です。Broncosとしても、ここでファーストダウンを許したくない状況でした。
この場面で49ersが選択したのが、TE Kittle へのスクリーンパスでした。
戦術解説① Shanahanが予測していたCover 0
このプレイでBroncosは、7人でプレッシャーをかけるCover 0 を使っていました。
Cover 0とは、深い位置にSafetyのHelpを残さず、基本的にレシーバーをマンツーマンで守るカバーです。QBに強いプレッシャーをかけられる一方、マンツーマンの選手がブロックされると、後ろから助けに来る選手がいないという弱点があります。
49ersのKyle Shanahan HCは、試合後にこのプレイについて次のように話しています。
“We knew it was going to be tight. Just some running situations, anticipating zero and that’s what we got. We thought if we could get it versus zero and just get the screen off and make one block, then that’s what we’d envisioned because that’s the type of player George is. We got that block… It was a hell of a play by him and perfect timing.”
「Cover 0を予測していたところ、実際にその守備が来た」という意味です。
さらにShanahanは、Zeroに対してスクリーンパスを通し、重要なブロックを一つ決められればKittleの能力を生かせると考えていたことも説明しています。
出典:49ers公式|Shanahanの試合後コメント(2026年10月5日)
Cover 0でプレッシャーをかけると、多くの守備選手がQBに向かって前進します。そこでスクリーンパスを使えば、その勢いを逆手に取ることができます。
それでは、実際にどのような動きがあったのか見ていきましょう。
戦術解説② KittleとBonittoの駆け引き
まず注目したいのが、BroncosのEdge、Nik Bonittoです。
公式XのSideline映像では細かな足運びは分かりにくいのですが、私が確認したAll-22のEnd Zoneアングルでは、Bonittoはスナップ直後、大外から数歩スピードラッシュを仕掛けていました。
これに対してKittleは、OTの隣で一度パスプロテクションをするような動きを見せます。
するとBonittoは内側へ進路を取り、QB Purdyへ向かいます。その間にKittleはブロックの位置を離れ、スクリーンパスを受けるために外へ出ていきました。
Kittleが一度ブロックするように見せたことが、BonittoをQBの方向へ引きつける要因になったのではないでしょうか。
Bonittoが何を見て進路を選んだかまでは分かりませんが、結果としてKittleがパスを受けるスペースが生まれました。
これがスクリーンパスの面白いところです。QBにプレッシャーをかけようとする守備の動きを、逆に攻撃側が利用することができます。
また、Xの投稿に対して「このプレイはあえてRBとTEを反対にセットさせることで、Peel(RBについていく役割)の選手を遠ざけ、Kittleのスペースを作ったのでは?」というご意見もいただきました。プレイの精度を高めるための細かい工夫を推測するのも面白いところですよね。
そして、このスクリーンをビッグプレイに変えたのが、次に紹介するブロックです。
戦術解説③ C BrendelのTimingと WR Watkinsの最後の仕事
スクリーンパスは、パスが通れば成功するというものではありません。
まず注目したいのが、49ersのC Jake Brendelです。
Brendelはパスプロテクションから前方へ出て、Kittleをカバーしていたと見られるS Brandon Jonesをブロックしていました。
特に素晴らしいと感じたのは、Brendelがブロックに出るタイミングです。
スクリーンでは、OLが早く飛び出すと守備にプレイを読まれ、逆に遅ければレシーバーの前に立てません。BrendelはKittleがボールを受けるタイミングに合わせて前に出て、Jonesの進路を遮っていました。
Cover 0では深いSafetyのHelpがないため、このように捕球直後のタックラーをブロックできると、一気に大きなゲインにつながる可能性があります。
またこれも、Xの投稿に対して「もし、BrendelがCover0を理解してこの動きをしていたらすごい!」というご意見もいただきました。確かに最も危険な選手を一瞬で判断してブロックするのは、NFLレベルのOLならあり得るかもしれませんね。
そして、もう一人注目したいのが、WR Jordan Watkinsです。
Watkinsはスナップ直後からブロックに向かったわけではありません。紹介した公式XのSideline映像ではWatkinsのブロック自体ははっきり映っていませんが、別途All-22で確認したところ、敵陣40ydライン付近までパスルートを走るように見せ、その後Broncosの#31 Kris Abrams-Draineをブロックしていました。
パスルートを見せる動きには、Defenderを引きつけたり、スクリーンへの反応を遅らせたりする効果があった可能性があります。Watkinsがブロックしなければ、#31がKittleをタックルできた可能性もあります。ただし、それがなければ確実にTDを防げたとまでは言えません。
それでも私が評価したいのは、自分にパスが来ないプレイでも、最後まで仕事を続けていることです。こうした選手の働きが、ロングゲインをタッチダウンへ変える要因にもなるのだと思います。
このプレイから学べること
このTDは、Kittleの走力がすごかった、というだけのプレイではありません。
まずShanahanがCover 0を予測してスクリーンを選択したこと。そしてKittleがパスプロテクションを見せてからリリースし、Brendelが捕球地点でブロック。さらにWatkinsもDownfieldで自分の仕事を続けていました。
Play Callが良くても、選手のExecutionが伴わなければタッチダウンにはなりません。
逆に、選手が素晴らしいブロックをしても、相手の守備を利用できる設計がなければ、ここまでのビッグプレイにはならなかったかもしれません。
私自身はディフェンスを指導する立場なので、Cover 0でスクリーンを受けたとき、誰が最初にタックルできるのか、その選手がブロックされた後に誰が追いかけられるのか、という部分も気になります。
プレイを見るときには、ボールを持った選手だけではなく、その前後で何が起きているのかまで注目したいですね。
おわりに
今回は、49ersのKittleが決めた56yd TDを解説しました。
動画を最初に見ると、Kittleのスピードに目が行くと思います。しかし、Shanahanの狙い、Bonittoのラッシュ、Brendelのタイミング、Watkinsの最後の仕事を知ったうえでもう一度見ると、違った面白さがあるのではないでしょうか。
特に、ボールを持っていない選手の働きに目を向けることも、フットボール観戦の楽しさだと思います。
それでは、また次回をお楽しみに。

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