今回は、兵庫県神戸市王子スタジアムにて行われた、第53回全国高等学校アメリカンフットボール選手権大会決勝戦 クリスマスボウルの模様をお伝えいたします。
関東代表の佼成学園高校と関西代表の大阪産業大学附属高校の対戦となったこの試合は、30-27で佼成学園高校が勝利となりました。佼成学園高校は2年ぶり5回目となる、高校日本一の座を掴みました。
この試合の様子は、Youtubeとポッドキャストでも解説しております。
試合は以下から視聴できます。
試合の見どころ
1Q
産大高校は、得意のオプションプレイをフェイクにしたパスを主将を務めるWR#18の小段選手に投じますが、ボールが手につかず失敗となります。佼成学園のQBは3年生の小林選手。監督の息子さんでもあり、昨年もクリスマスボウルに出場していました。小林選手は高校生とは思えないパスの精度で、次々にパスを決めていきますが、3rd8の状況で狙ったロングパスを、2年生DB#11藤原選手がインターセプト!攻守交替となります。産大高校と言えば力強いランのイメージですが、このクォーターはパスを積極的に使用します。しかし、2年生DL#90下関選手らの集まりが早く、止められてしまいます。
2Q
ゴール前まで進んだ佼成学園は、中央のランで攻め続け、4thDownショートを3年生RB#23蓑部選手のランでタッチダウン!キックも決まり、7-0と先制します。その後、佼成学園のキックで試合が再開しますが、ここでまさかのオンサイドキック!しかしここはオフサイドの反則。オンサイドキックは取消となります。一方、産大高校は小林選手がオプションフェイクの構えから、オプションの動きとは反対サイドのWR小段選手にパスを決め、タッチダウン!キックも決まり、7-7とします。
一方の佼成学園のQB小林選手ですが、プレッシャーを回避しながら何とかパスを投げましたが、このパスを3年生DB#14原田選手がインターセプト!再び攻撃権が産大高校に移ります。2Qからは産大高校のプレッシャーが激しくなっていましたね。
産大高校は小段選手にリバースの形でボールを渡し、RBの位置にいた#16吉田選手にパスを投げるスペシャルプレイも決まり、ゴール前に進んでいきます。産大高校のゴール前オフェンスはRBを3人置いた3バック体形。ここからランを3回行いますが、佼成学園のディフェンスが厚く、前に進めません。
4thDownギャンブルで、産大高校はQB・FB・RBが並んだプロアイと呼ばれる体形にチェンジ。その3人のランナーが同じ方向に動くリードオプションというプレイで3年生RBの吉田選手がタッチダウン!
キックも決まり、14-7と逆転します。
残り時間29秒の佼成学園のオフェンスは、ロングパスを産大高校にインターセプトされ、ここで前半が終了します。
3Q
後半は佼成学園の攻撃。パスが上手な小林選手ですが、後半からは小林選手を積極的に走らせます。そして、3-11の状況で1年生WRの小林選手へのパスでロングゲインし、一気にタッチダウン!キックも決まり、14-14と同点にします。そして、その後の産大高校のキックリターンで、#16吉田選手がキックオフリターンタッチダウンのビッグプレイ!佼成学園に傾きかけた流れを取り戻し、21-14と再びリードします。
佼成学園はラン中心のオフェンスに切り替えますが、パントに追い込まれます。そしてここで佼成学園がパントフェイクパスのスペシャルプレイに成功。そして、3年生RB#23蓑部選手が連続でボールをキープし、タッチダウン!佼成学園は後半からラン中心だったのですが、実はこの時QBの小林選手は手を負傷してパスを投げられなかったそうです。しかし、このTDの後のキックを外してしまい、21-20と産大高校のリードは変わりません。
佼成学園の攻撃ですが、3rdダウンでパスを投げようとしたQBの小林選手を、産大高校2年生LB#44有川選手がサックし、ファンブルフォース!そのボールを産大高校がリカバーして攻守交替となります
4Q
絶好のフィールドポジションで攻撃権を得た産大高校は、3rdダウンの攻撃で小段選手へ本日2つ目のTDパスが決まります!ここでキックは外してしまいますが、27-20とリードを広げます。
佼成学園は再び蓑部選手のランでゲインを重ねます。途中、2年生RB#26宮本選手も交替出場していました。そして、蓑部選手のランでタッチダウン!このシリーズは全てランという展開でした。キックも決まり27-27の同点とします。
産大高校はパスで攻撃を繋ごうとしますが、なかなか思うように進めずパントで攻守交替。続く佼成学園の攻撃も全てランプレイ。しかし、中央・外・そしてモーションを使用したりなど、的を絞らせない戦略で敵陣27ヤードまで進んでいきます。この4th5の状況で、FGユニットを送り込みます。そして44ヤードのFGは、3年生K#5吉川選手が見事成功。残り時間約1分で30-27と逆転します。
反撃したい産大高校でしたが、小林選手のパスは佼成学園3年生DB#1岡村選手にインターセプトされ、万事休す。佼成学園が時間をつぶし、30-27で佼成学園の勝利となりました。
表彰
・敢闘賞は産大高校WR/DBの小段選手。この日は2TDの活躍でした
・最優秀バックス賞である、三隅杯を受賞したのは、3年生RB蓑部選手。後半は終始ボールをキープするというタフさを見せつけました。
・最優秀ライン賞である、安藤杯を受賞したのは2年生DL99番下関選手。小林選手に対して、再三プレッシャーをかけていました。
【戦術解説】大阪産業大学附属高校
大阪産業大学付属高校の気になったプレイをご紹介します。
➀Toss Fake Reverse Pass
産大高校が得意とするスペシャルプレイの、RBへのパスです。このプレイは、RBの吉田選手にトスのフェイクをして、FBにボールを渡します。そしてハンドオフを受けたFBはWRの位置にいた小段選手へボールを渡します。
これはリバースというプレイですが、ここから小段選手が最初にトスのフェイクをした吉田選手へパスを投げるという、ボールが行ったり来たりするというプレイでした。
ディフェンスの心理的に一度フェイクがあると次の展開を考えるので、そのフェイクをした後の選手(今回で言うとRBの吉田選手)からは目を切ってしまいます。そんなディフェンスの心理を突いた、見事なスペシャルプレイでした。吉田選手はフリーとなり、これで約25ヤードのゲインとなりました。
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②Leed Option
4thDownギャンブルでタッチダウンを取ったプレイです。
産大高校はQB・FB・RBが並んだPro I(プロアイ)と呼ばれる体形から、3人のランナーが外側へ向かって走ります。この際、DEの選手をわざとブロックせずに浮かし、DEがQBに来ればRBへピッチし、DEがRBに来ればそのままQBがキープするという、オプションのプレイとなっています。
さらに、このオプションにFBのリードブロックが付くため、Lead Option(リードオプション)と呼ばれています。このプレイでは、FBの位置についた2年生#7の山口選手の好ブロックもありタッチダウンとなりました。
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【戦術解説】佼成学園
③Split Zone Fake QB Lead
佼成学園の後半最初のプレイです。左にWR3人を固めたBunch(バンチ)と呼ばれる体形から、TEの選手をOLがブロックする方向と反対に動かします。
これはSplit Zoneと呼ばれる動きですが、このTEはDEをブロックせずにそのまま抜けていきます。
一方、QBはRBにハンドオフの動きをしますが、DEの動きを見ています。このDEがQBを見ていればRBにハンドオフし、DEがRBを見ていればQBがボールを抜いて走るというオプションプレイです。
結果的にDEはRBを見たため、QBはボールを抜いて走り、さらに先ほどのSplit Zoneの動きをしたTEがリードブロッカーになるという、プレイです。結果的にこのプレイは10ヤードのゲインとなりました。
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④Power Fake Side Screen
佼成学園が得意とするWRへのSide Screenです。
オフェンスガードの選手が右側に向かってプルと呼ばれるブロックの動きをし、RBも左から右へとハンドオフの動きをします。これはPowerというプレイですが、このPowerはフェイクで、本命は左のWRへのSide Screen。
左から右へのPowerの動きをすることで、ディフェンスの選手をオフェンスから見て右側に反応させています。通常のSide Screenは、OL1人がWRのリードブロッカーになるのですが、佼成学園はOLがほぼ全員リードブロッカーになります。
Powerの時は右側にいるOL達はダウンブロックと言って、内側へブロックする動きをするのですが、このプレイのフェイクをすることで、非常に自然な動きでリードブロックに出ることができています。
このプレイは1年生WRの小林選手がそのままエンドゾーンへ持ち込み、タッチダウンに繋がりました。
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おわりに
いかがでしたでしょうか。今回は、佼成学園高校と大阪産業大学附属高校の試合の様子と、
気になったプレイを戦術解説いたしました。
高校日本一を決めるクリスマスボウルですが、毎年最後の最後までどちらが勝つか分からないという激戦が広げられています。両チームともレベルの高い戦術を駆使し、フィジカルもファンダメンタルも鍛えられている印象を受けました。
今後、彼らが大学でどのような活躍をしていくのか、非常に楽しみです。
それではまた次回をお楽しみに。
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