【NFL】スーパーボウル2025 イーグルス vs チーフス:完全解説 – マホームズを封じ込めた驚異のディフェンス戦略

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イーグルス 40-22でチーフスに圧勝!

2025年のNFLスーパーボウルLIXは、フィラデルフィア・イーグルスがカンザスシティ・チーフスを40-22で下し、見事優勝を果たしました!一時は34-0まで点差が広がるほどの圧倒的な勝利でした。

チーム別スタッツ

スタッツイーグルスチーフス
総ヤード数345275
パスヤード210226
ラッシュヤード13549
ファーストダウン2112
3rdダウン成功率3/123/11
ターンオーバー13
タイムオブポゼッション36:5825:02

こうしてみると、チーフスのディフェンスは決して悪くなかったように思えます。3rdダウン成功率は3/11と勝負所でもしっかりと抑えています。

そう思うとやはり、チーフスのターンオーバー3回は痛かったですね。内1回はPick6で、もう1回は自陣ゴールライン付近でのインターセプトなど、即失点に結びつく状況を作ってしまいました。

主要選手別スタッツ

イーグルス

選手ポジションスタッツ
Jalen HurtsQB17/22, 221 YDS, 2 TD, 1 INT, 11 CAR, 72 YDS, 1 TD
Saquon BarkleyRB25 CAR, 57 YDS, 6 REC, 40 YDS
DeVonta SmithWR4 REC, 69 YDS, 1 TD

クォーターバックジェイレン・ハーツは77%という高いパス成功率で、221ヤードの活躍。1度のインターセプトを喫しましたが、試合を通じて安定したパスを投じていました。そして、ランでもリーディングラッシャーとなる72ヤードを獲得。後述しますが、ハーツのランが効果的に出ていたことが試合を優位に進めました。その結果、ジェイレン・ハーツがスーパーボウルMVPに選出されました!

ランニングバックセイクオン・バークリーはラン57ヤードと他の試合に比べると少ない数字でした。チーフスのランディフェンスはバークリーへの対策はしっかりとできていました。

ワイドレシーバーデボンタ・スミスは46ヤードのTDパスキャッチを含む、4回69ヤードの活躍でした。

チーフス

選手ポジションスタッツ
Patrick MahomesQB21/32, 257 YDS, 3 TD, 2 INT, 4 CAR, 25 YDS
Xavier WorthyWR8 REC, 157 YDS, 2 TD
Travis KelceTE4 REC, 39 YDS

クォーターバックのパトリック・マホームズは、前半で大きくスタッツを落としましたが、第4Qから盛り返して最終的には257ヤードのパス獲得でした。しかし、上述した通り2つのインターセプトが試合の流れを大きく変えてしまいました。

ルーキーのワイドレシーバーであるザビア・ワーシーが8キャッチ157ヤード2タッチダウンと健闘しましたが、チームの敗戦を防ぐことはできませんでした。

マホームズの不調

前半戦の驚くべきスタッツ

前半は24-0とイーグルスが圧倒的優位の状況で折り返しましたが、ここでチーフスオフェンスのスタッツを見てみましょう。

スタッツチーフス
総獲得ヤード数23ヤード
ランヤード3ヤード
パスヤード20ヤード(サックロス除く)
ファーストダウン数1回
サードダウン成功率0/6(成功なし)
ターンオーバー2回(1回はピック6)
ポゼッションタイム約10分

ちょっと信じられない成績ですよね・・・。ハイパーオフェンスと呼ばれるチーフスをここまで封じ込めることができたのは、おそらくこのスーパーボウルでのイーグルスが初めてではないでしょうか。

歴代最低レベルのQBR記録

QBR(クォーターバック・レーティング)は、クォーターバックの総合的な性能を示す指標です。マホームズのこの試合のQBRは、なんと11.4という驚異的な低さでした。これは、ESPNがこの指標を導入して以来、スーパーボウルで2番目に低い数値です。

マホームズのプレーは、普段彼の活躍をよく知るNFLファンから見ても信じられないほど不調でした。

2インターセプトの衝撃

マホームズは前半だけで2回のインターセプトを喫しました。1回目は、イーグルスのルーキーコーナーバック、クーパー・デジャンによって38ヤードのタッチダウンに持ち込まれました。

2回目は、ラインバッカーのザック・バーンによってチーフスの自陣14ヤードラインで奪われ、すぐさまイーグルスのタッチダウンにつながりました。

これは、マホームズがスーパーボウルで初めて前半に2回のインターセプトを記録した試合となりました。

イーグルスの圧倒的ディフェンスを徹底解説

チーフスを封じ込めた戦略

総論としては、非常に高いレベルでゾーンディフェンスを行うという、鍛え上げられた選手の技術・能力を最大限に生かした戦略でした。ゾーンディフェンスはマンツーマンディフェンスと違い、一人ひとりの役割がプレイ開始前に完全には決定していないことから、選手の戦術理解とポジション同士でのコミュニケーションが求められます。

特に、イーグルスのディフェンスコーディネーターのビック・ファンジオが今年好んで使っていたのが4人のディフェンスラインのみラッシュし、残り7人でパスカバーを行うゾーンディフェンス。この試合、イーグルスはほぼ全てのプレーでゾーンディフェンスを展開しました。これは、マホームズの得意とするマンツーマンカバレッジを避け、パスコースを読みにくくする戦略です。

また、イーグルスは殆どのプレイでカバー4を使用していました(全体の59.5%)。

カバー4は4人のディフェンダーがフィールドの奥を守るため、一発タッチダウンを許しにくいカバーです。カバー4の詳細を知りたい方は以下の記事をご覧ください。

ディフェンスコーチの私としても、イーグルスのディフェンスはDB・LB・DLの全てのポジションが責任と役割を果たした、ほれぼれするような完璧なゾーンディフェンスだったと思います。具体的にパート別に解説していきましょう。

DB:ディスガイズとボールへの反応

イーグルスのディフェンスがゾーンディフェンス中心であることは先ほど述べましたが、基本的にはスナップ前はツ―ハイディフェンスからプレイを始めます。マホームズはパスの時には相手のパスカバーを読むために、セイフティーやコーナーバックの動きを見ています。

具体的にはセイフティーが前に上がって最終的には後ろは一人でカバーするのか、コーナーバックは前に上がるのか後ろに下がるのかが、マホームズがパスを投げる判断軸となっています。後ろに下がればカバー4で、前に上がればカバー2の確率が高いです

例えば、ワイドレシーバーが5ヤード前に走り振り向くようなパスパターンをヒッチと呼びますが、コーナーバックが後ろに下がった場合はパスが決まりますが、コーナーバックが前に残るとパスは決められません

イーグルスのコーナーバックのダリウス・スレイキニョン・ミッチェルはスナップされる前はもちろん、スナップされた後も、前に上がるか後ろに下がるかをマホームズに悟られないようにディスガイズを行い、マホームズが簡単にパスを投げられないようにしました。これにより、マホームズは疑心暗鬼になり最初に決めたターゲットにパスが投げられない状況となりました。下の動画は、マホームズが最初に観たパスターゲットがコーナーバックにつかれていると感じ、パスを投げあぐねている様子です。結果的にこのプレイはインターセプトに繋がりました。

DL:圧倒的なフィジカルとスピードで6サック

イーグルスのディフェンスラインは、マホームズを6回もサックしました。これは、マホームズのNFLキャリアで1試合最多のサック数です。私から見てもマホームズは終始落ち着いておらず、イーグルスのディフェンスラインからプレッシャーがかかっていない状況でも逃げ回ってしまい、不安定なパスを投げていた印象でした。

そんなイーグルスディフェンスでサックをしたのは、ジョシュ・スウェットが2.5回、ミルトン・ウィリアムスが2回、ジョーダン・デイビスが1回、ジャリクス・ハントが0.5回のサックを記録しました。

ビデオを見ると、オフェンスラインがパスプロテクションに下がるもディフェンスラインに一瞬で交わされたり、押し込まれてパスを投げようとしていたマホームズにぶつかるなど、クォーターバックを守り切れていませんでした。

この試合のチーフスの左タックルがジョー・サニーでしたが、彼は本来ガードのポジションですが、この試合では左タックルとして起用されました。しかし、彼のパフォーマンスは期待に応えられず、PFFの評価によると60.7のパスブロック評価を記録するなど、ディフェンスラインに圧倒されてしまいました。

DBのパートでも説明しましたが、マホームズが最初に決めたターゲットにパスを投げられない状況を作り、その間にディフェンスラインのプレッシャーが届くというディフェンスにとって理想的な状況をいくつも作ることができました。マホームズがサックされたプレイの多くが、最初のターゲットにパスを投げられなかった状況でした。

LB:役割の徹底によりランオフェンスを完封

マホームズが不調によりパスが決められない状況で17点差となり、アンディ・リード監督はランを選択します。しかし、ここでもイーグルスのラインバッカーであるザック・バーンなどがランへの反応が速く、思うようにランが出ない状況をつくりました。

ブリッツで仕掛けるチームに対しては入れ違いを狙ったパスや、ブリッツと反対方向へのランで突破口を見出すことができるのですが、イーグルスのディフェンスはシンプルなゾーンディフェンスゆえ、ラインバッカーが適切に動けばランは止められてしまいます。

パスが出ない中で、しかもランにも頼れないという八方ふさがりの状況を作ったのは、役割を徹底してしっかりとランを止めたイーグルスのラインバッカーの活躍がありました。

脳震盪の可能性 – 第1クォーターの激しいタックルの影響

マホームズは第1クォーターで激しくタックルされた際に頭部を地面に強く打ち付けました。この衝撃的な場面は多くのファンの注目を集めました。あまりにも不調なマホームズに対して、試合後にこのシーンで脳震盪になっていたのでは?と考えるファンも少なくありませんでした。しかし、脳震盪の専門家クリス・ノウィンスキー博士は、マホームズが試合を通して具体的な脳震盪の兆候を示さなかったと指摘しています。

マホームズを不調にさせたのはイーグルスディフェンス

そう考えると、スーパーボウルでマホームズが不調に見えたのはイーグルスのディフェンスの貢献以外にありません。相手DBのディスガイズに惑わされ、パスカバーが読めない、そうしている間にプレッシャーがやってくる、ランが出ないので自分が何とかするしかない。そんな状況ではさすがのマホームズでもメンタルエラーを起こしていたのではないかと思います。

ビデオを見ると、マホームズがパスを投げようかと迷っているシーンが何度も映っていました。また、まだプレッシャーがかかり切っていない状況でもオフェンスラインが作るポケットから逃げ出していました。これらは、マホームズを通常の精神状態ではなかったことを表しています。

精神的プレッシャーの影響

この試合のマホームズの成績は、彼のシーズン平均を大きく下回りました。2024年レギュラーシーズンでは、マホームズは67.6のQBRを記録し、リーグ8位でした。スーパーボウルでの彼のパフォーマンスは、まるで別人のようでした。

おわりに

いかがだったでしょうか。今回は2025年のNFLスーパーボウルLIXの振り返りを行いました。

イーグルスのディフェンスがどのようにチーフスオフェンスを苦しめたを中心に解説しましたが、もちろんイーグルスのオフェンスも素晴らしいプレイを見せていました(オフェンスについても時間があれば解説します)。

チーフスにとっては前人未踏の3連覇という期待がかかる中、最後は残念ながら負けてしまいましたが、若手選手をまとめ上げながら今年もスーパーボウルに出場するなど、チームとしての底力をひしひしと感じるシーズンでした。

そして何より、イーグルスはシーズンを通してオフェンス・ディフェンスともに活躍し、特にオフェンスはランニングバックのセイクオン・バークリーの活躍もあり、ランオフェンスでは上位のチームとなりました。スーパーボウルでは2年前に敗北したチーフスに対してリベンジを果たし、見事王者に輝きました。イーグルス、そしてイーグルスファンの皆さん、おめでとうございます!

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