4 th Down 1
NFL Week 5 LAC vs DEN。
この試合で私が特に印象に残ったのは、2人のHead Coachが下した4th DownでのDecision Makingでした。
LACのJim Harbaugh HCは、7点リードの第4Q、自陣41ydから4th & 1のギャンブルを選択。しかし、QB Sneakは失敗し、その後DENに同点TDを許しました。
一方、DENのSean Payton HCは、同点の第4Q、敵陣1ydから4th & Goalでギャンブルを選ばず、FGによって3点のリードを奪いました。
両チームとも、残りわずか1yd。
しかし、そのDecisionは対照的なものでした。
最終的にDENが23-17で勝利したことを考えると、「LACは攻めすぎた」「DENは堅実だった」と評価したくなります。
しかし、本当にそうなのでしょうか?
試合後の両HCの会見を調べると、興味深い違いが見えてきました。
HarbaughはDEN Defenceの体型を認識しながら、QB Sneakを変更しなかったことを反省しています。
一方のPaytonは、残り1ydの距離感や相手側の状況を確認したうえで、FGを選んだと説明しています。
2人はそれぞれ何を見て、何を判断材料にしたのでしょうか?
今回は、HCの会見、All-22によるDefensive Frontの分析、試合中の客観的な数字を組み合わせ、FootballにおけるDecision Makingについて考えてみたいと思います。
LACの4th & 1|Harbaughが後悔した理由
まずはLACのDecisionから振り返ります。
7点リード、残り10分33秒。
この場面でLACには大きく2つの選択肢がありました。
PuntでDENを自陣深くから攻撃させるか。それともギャンブルによって攻撃権を維持し、時間を消費しながら追加点を狙うか。
Harbaughが選んだのは後者でした。
しかし、QB Justin HerbertのSneakはDENのDefenseに止められ、1ydを獲得することができません。
結果としてDENは敵陣41ydから攻撃を開始し、5プレーでTDを決めて17-17の同点に追いつきました。
Harbaugh HCが認めた判断ミス
試合後、HarbaughはこのDecisionについて明確に反省しています。
“It was the wrong decision.”
「間違った判断だった」
そして、もう一つ重要な発言を残しています。
“When I saw them gap down”
Harbaughは、DENがGap Downしている(内側のギャップを詰める)のを見たとき、Timeoutを取ってPuntすべきだったと振り返っています。
出典:Chargers公式|Harbaugh Takes Accountability
この発言から、HarbaughはPre-snapの時点でDENのDefensive Frontに気づいていたことが分かります。
では、実際にDENはどのようなDefenseを見せていたのでしょうか?
All-22分析|DENはA・B GapをDLで塞いでいた
All-22を確認すると、DENは3人のDTを中に配置し、LBと合わせてA GapとB Gapを埋めるQB Sneak対応のFrontにAdjustしてセットしていました。

さらに、OLBはOTの外側にAlignしています。
注目したいのは、InteriorのGapをDLによって塞いでいたことです。
QB Sneakは、基本的にCenterとGuard周辺で生まれるスペースをQBが縦に攻め、短い距離を獲得するプレーです。
当然、OLがどれだけ前方に押し込めるかが重要になります。
しかし、このプレーではDENのDLが低いPad LevelでOLの下に潜り込み、OLの姿勢を崩すように押し込んでいました。
その結果、LACのOLはQBが前進するためのレーンを作ることができませんでした。
私が考えるQB Sneak失敗の主要因は、DENのDLが低いPad LevelでInteriorに刺さり、QBのランニングレーンを消してしまったことです。
ここにはAlignmentとExecutionの両方が関係しています。
まずPre-snapでは、A・B Gapを塞ぐFrontをセットすることで、QB Sneakに必要なInteriorのスペースを制限する準備をしていました。
そしてSnap後には、DLが低い姿勢でOLに勝ち、実際にレーンを消しています。
これは単に人数を増やして止めたプレーではありません。
Gapを埋めるAlignmentと、それを実現するPad Level・Techniqueが組み合わさった好プレーだったと感じています。
Que RobinsonもQB Sneakを予測していた
興味深いのは、このプレーでQB Sneakを止めたQue Robinsonのコメントです。
Robinsonは試合後、LACのFormationからQB Sneakを予測していたと説明しています。
さらに、自分のAssignmentはQBがEdge側へ抜けることを防ぐことだったと語り、DLの働きも高く評価しました。
出典:Denver Gazette|DEN Defenseの試合後コメント
実際にAll-22を確認すると、DENはA・B Gapを塞ぎ、OLBはOTの外側にAlignしていました。
この配置とRobinsonの証言を合わせると、DENはInteriorのランニングレーンを制限しながら、QBが外へ逃げることにも備えていたと解釈できます。
そして実際のプレーでは、DLが低いPad LevelでOLを崩し、QB Sneakを阻止しました。
Pre-snapでの準備とPost-snapでのExecution。その両方が噛み合ったプレーだったと思います。
自分がHCだったらどうするか?
私ならTimeoutを取ります。
理由は、4th Downでギャンブルすること自体に反対だからではありません。
当初はQB Sneakで1ydを獲得できると判断していても、相手がInteriorのGapを塞ぐFront Adjustを見せたのであれば、成功確率を再評価する必要があるからです。
特に今回は7点リードしており、残り時間も10分以上ありました。
Timeoutを使ってプレーを再検討し、必要であればPuntへ変更する。
少なくとも、相手が何を準備しているかを認識したうえで、そのまま当初のプレーを実行する必要があったのかは考えるべきかと思いました。
もちろん、別のプレーへ変更してギャンブルを続行する選択肢もあります。
ただ、この場面ではPuntによってDENに長いDriveを要求することにも大きな価値がありました。
Harbaughが試合後に反省したのも、ギャンブルの成否だけではなく、相手のFrontを見た後にDecisionを変更しなかったことだったと考えられます。
DENの4th & Goal|PaytonはなぜFGを選んだのか?
続いてDENのDecisionです。
LACの4th Down失敗から同点に追いついたDENは、次のLACの攻撃でも大きなプレーを生み出しました。
DL Zach AllenがHerbertからStrip Sackを奪い、Que RobinsonがFumbleをRecover。
DENは敵陣23ydという絶好のField Positionから攻撃を開始します。
その後、敵陣1ydまで前進し、4th & Goalを迎えました。
ここでPaytonが選んだのは、TDを狙うギャンブルではなくFGでした。
ただし、最初からFG Unitを送り込んだわけではありません。
DENは一度Offenseをフィールドに残した後、Timeoutを取ってFGを選択しています。
Payton HCの会見から見えるDecision
試合後、Paytonは次のように説明しています。
“I was going to kick it”
もともとFGを考えていたものの、残り1ydの距離感を見極めようとしていたということです。
そして、相手側で起きていることを確認してFGを選択したと語っています。
出典:The Sporting Tribune|両HCのDecisionに関する発言
ここから分かるのは、Paytonが単純に「残り1ydだから攻める」「同点だからFG」という判断をしていたわけではないことです。
残り1ydを獲得できる見込みや、相手側の状況を確認したうえで、最終的にFGを選んだと考えられます。
All-22分析|LACは明確なGoal Line Frontを見せていたのか?
実際にAll-22を確認しました。しかし、この場面でLACが明確なGoal Line Frontをセットしていたとは言い切れませんでした。
そこで、もう一つ注目したのは、Timeout前後の様子です。
Timeout前のPlay Clockは10秒を切っていました。そのため、TimeoutにはギャンブルとFGの最終判断だけでなく、Play Clockの管理という目的もあった可能性があります。
さらにTimeout後には、Payton HC、OC、Special Teams Coordinator、QB Bo Nixが会話している様子が確認できました。
会話の内容までは分かりませんが、最終的なDecisionに至るまでの過程を考えるうえで興味深い場面でした。
DEN Defenseへの信頼
私もこの場面ではFGを選択します。
最大の理由は、この試合のDEN Defenseが好調だったことです。
これは単なる印象ではありません。
PaytonがFGを決断した第4Q残り5分10秒の時点で、DEN Defenseは次の成績を残していました。
| 守備指標 | FG判断時点 |
|---|---|
| Sacks | 3回 |
| Takeaways | 2回 |
| 4th Down Stop | 1回 |
| LACの第4Q得点 | 0点 |
特に重要なのは、直前の2つのLACの攻撃です。
まず、DENは4th & 1のQB SneakをStopし、敵陣41ydからの攻撃権を獲得しました。
このチャンスをOffenseが同点TDにつなげています。
そして、その直後のLACの攻撃でもZach AllenがStrip Sackを決め、Que RobinsonがFumbleをRecover。
再び敵陣23ydからの攻撃権を獲得しました。
つまり、DEN Defenseは直前の2ポゼッションを連続してビッグプレーで終わらせていたわけです。
実際にPaytonも試合後の会見で、3つのTakeawaysと4th Down Stopを、試合の流れを変えた4つの大きなプレーとして評価しています。
出典:DEN公式|DefenseによるTakeawaysとPaytonのコメント
もちろん、これはFG選択の直接的な理由を説明した発言ではありません。
しかし、FGを選んだ時点ですでに2 Takeaways、3 Sacks、4th Down Stopを記録していたことを考えると、私自身はDefenseに試合を託す判断に合理性があったと考えています。
同点で残り約5分。
FGを決めれば3点リードとなり、LACは再び得点しなければなりません。
そして、すでに大きなプレーを連続して生み出しているDefenseに試合を託すことができます。
もちろん、FGが唯一の正解だとは思いません。
1ydからTDを狙い、7点リードを奪うことにも合理性があります。
仮にギャンブルに失敗したとしても、LACは自陣深くから攻撃しなければなりません。
そのため、Field Positionの観点からはDENのギャンブルにも魅力があります。
それでも私は、ここまでのDefenseのパフォーマンスを考えると、3点を確保して再びDefenseに託す判断を支持します。
4th DownのDecision Makingでは、相手Defensive Frontだけでなく、自軍Defenseのパフォーマンスも重要な判断材料になる。
今回の試合は、そのことを考えさせる場面でした。
※これはあくまで私自身のコーチとしての解釈であり、Payton本人がDefenseへの信頼をFG選択の直接的な理由として明言したわけではありません。
同じ1ydでもDecisionの条件は異なる
ここまで2つのプレーを比較してきましたが、忘れてはいけないことがあります。
それは、両HCが置かれていたSituationが大きく違うということです。
| 判断材料 | LAC | DEN |
|---|---|---|
| Score | 7点リード | 同点 |
| 残り時間 | 10:33 | 5:10 |
| Field Position | 自陣41yd | 敵陣1yd |
| ギャンブル成功時 | 攻撃権維持 | TD |
| ギャンブル失敗時 | 相手が敵陣41ydから攻撃 | 相手が自陣1yd付近から攻撃 |
| 代替策 | Punt | FG |
ここで注目したいのは、失敗した場合のField Positionです。
LACのギャンブル失敗は、DENに短いフィールドを与えてしまいました。
一方、DENが4th & Goalでギャンブルに失敗した場合、LACは自陣1yd付近から攻撃することになります。
つまり、Field Positionだけを考えれば、DENのギャンブルは失敗時のリスクが比較的小さかったとも言えます。
それでもPaytonはFGを選択しました。
この違いを考えると、4th DownのDecisionは残りDistanceだけで決まるものではないと分かります。
Score、Time、Field Position、Offensive Personnel、Defensive Front、そして自軍Defenseの状態。
それらを総合的に判断することがHCには求められます。
DecisionとExecutionを分けて評価する
今回、Harbaughは自身のDecisionを強く反省しました。
しかし、仮にQB Sneakが成功していたら、私たちはそのDecisionをどのように評価していたでしょうか?
逆に、PaytonがFGを選択した後、LACにTDを奪われて逆転されていたら、FGを選んだことが批判されていたかもしれません。
Footballでは、成功したDecisionが正しく、失敗したDecisionが間違いだったと評価されがちです。
しかし、コーチとしては次の2つを分けて考える必要があります。
Decision:与えられたSituationと相手のAlignmentを踏まえ、何を選択するか。
Execution:選択したプレーを、11人がどれだけ正確に実行できるか。
良いDecisionを下しても、Executionが悪ければ失敗することがあります。
逆に、Decisionに問題があっても、個人の素晴らしいExecutionによって成功することもあります。
そして、もう一つ大切なのがAdjustmentです。
試合前やSidelineで考えたGame Planが、Pre-snapの時点でも最善であるとは限りません。
相手が何を準備しているかを認識し、必要であれば当初の方針を変更する。
今回のHarbaughの会見は、その重要性を改めて考えさせるものでした。
おわりに
いかがだったでしょうか。今回のLAC vs DENでは、両HCが同じ1ydを前に異なるDecisionを下しました。
LACはギャンブルして失敗。
DENはFGを選択してリードを奪い、最終的に勝利しました。
しかし、だからといってLACが積極的すぎた、DENが堅実だったというだけで終わらせたくありません。
今回のAll-22で私が特に注目したのは、DENがA・B GapをDLで埋めるFrontをセットし、低いPad LevelによってQBのランニングレーンを消していたことです。
そしてHarbaughは、そのDefensive Frontを認識していながらDecisionを変更しなかったと振り返っています。
一方、Paytonは相手側の状況を確認したうえでFGを選びました。
また、FG判断時点でDEN Defenseはすでに3 Sacks、2 Takeaways、1回の4th Down Stopを記録していました。
私自身がHCであれば、これだけ好調なDefenseがいることも、3点を確保する大きな理由になります。
今回改めて感じたのは、正しいDecisionを下すためには、自分たちが何をしたいかだけではなく、相手が何を準備し、自チームがどのような状態にあるかを正しく認識する必要があるということです。
Footballの駆け引きは、Snapの瞬間から始まるわけではありません。
11人のAlignmentを見た瞬間から、すでにDecision Makingは始まっています。
皆さんなら、この2つの4th DownでどのようなDecisionを下すでしょうか?
それではまた、次回をお楽しみに。


