今回もアメリカンフットボールの戦術を第54回スーパーボウルから紹介いたします。
第2Q残り14:08
自陣44y 1-10
Split Zone Fake Pass
画像はシフトで見づらいですが、Split Zoneをフェイクにしたプレイアクションパスです。ちなみに、Split ZoneとはRBのハンドオフ方向とは反対にブロッカーがキックアウトを打つブロックのことを指します。
さて、このプレイですがチーフスが前のプレイでインターセプトをした直後にコールされました。ターンオーバー後はモメンタムがオフェンスに傾き、かつディフェンスの選手は急にフィールドに呼ばれて浮足立っている状況が多いので、ロングパスを狙うには絶好のシチュエーションといえます。
このプレイのいやらしい(誉め言葉です)ところは、ターゲットとなるWRが一度シャローで浅く走ってから急加速して駆け上がるところです。49ersはこの時ゾーンディフェンスでしたが、ゾーンディフェンスの場合守備の役割は自分が担当するゾーンに入ってきた選手をカバーします。
上の画像は49ersが行ったカバー3ディフェンスです。LBが浅いゾーンを4人で守り、DBが深いゾーンを3人で守るものです。
チーフスのパスはこのゾーンディフェンスの切れ目を有効についたパスパターンです。
ここで、もう一度チーフスのパスプレイを見てみましょう。
・左のDB(×)はWRのディープポストについていきます。
・左のOLB(▽)はランフェイクをしたRBの動きにつきます。
・左のILB(▽)はWRのシャローに反応しますが、そのまま縦に上がっていくためDBのゾーンと判断してついていくのをやめます。
このように、DBとLBの間のスペースにWRが入り込んで見事にパスが決まりました。
もちろんゾーンディフェンスではなくマンツーマンディフェンスをしていればこのような受け渡しミスは発生しなかったでしょう。
しかし、マンツーマンディフェンスであってもシフトによるマンツーマンのつき間違いや、シャローからの縦上がりという難しいパスパターンでマンツーマンを振り切れるため、マンツーマンディフェンスであっても成功していた可能性が高いです。
このパスを投げたQBのマホームズも素晴らしいですし、取ったWRワトキンスも素晴らしいです。長いパスを投げるまでの時間を作ったOL・TEの働きも見事でした。そして繰り返しとなりますが、やはりターンオーバー直後にこのプレイをコールするオフェンスコーディネーターの勝負強さが凄いと思います。
アメフトを観戦するときは、ターンオーバー後にどんなプレイをオフェンスコーディネーターが選択するかを一つの視点として持っておくと面白いかもしれません。
下記動画の28:08から再生
次回もスーパーボウルからプレイを紹介します。
そろそろディフェンスのプレイ紹介もしたいのですが、純粋に個人のプレイが凄いものが多く、戦術でおぉ!となるプレイがまだ出てきません・・・笑
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