わずか11分で243yd。McCarthyは救世主なのか?
NFL Week 6、New York GiantsはNew Orleans Saintsに27–34で敗れました。
4Q残り11分25秒、24点差を追うGiantsは、先発QB Jameis Winstonに代えてJ.J. McCarthyを投入しました。
McCarthyは11/21、243yd、1TD、1INTを記録。チームは17点を返し、終盤には同点を狙えるチャンスも残しました。
243ydは、GiantsのQBによる1クォーターのパスヤードとして、1991年以降の球団最多タイ記録です。
一方、All-22を確認すると、INTや危険な投球、ターゲット選択の課題も見えてきました。
それでもGiantsは、Week 7からMcCarthyを先発に起用することを決断しました。
今回は243ydの数字だけでは見えない課題と、それでもMcCarthyが選ばれた理由を、現地メディアやコーチ陣の評価も交えて整理します。
All-22で見えた課題
WRとの認識が合わなかったINT
McCarthyは途中出場後の最初のドライブで、WR Malachi Fieldsを狙ったパスをMartin Emerson Jr.にインターセプトされました。
Fieldsが外側へ切り返した一方、McCarthyは内側のスペースにとどまると予測していたように見えますし、QBとWRの認識が一致していなかった可能性があります。
LB Pete WernerがRB Devin SingletaryのFlat Routeに反応して生まれた内側のスペースに、McCarthyはFieldsがとどまると予測していたと考えられます。しかしFieldsは外側へPivotし、結果としてEmersonがINTしました。
ここで重要なのは、QBとWRが同じプレーを知っていることと、守備の動きに対して同じ判断をすることは必ずしも同じではないという点です。
たとえばOption Routeでは、守備のCoverageやDefenderのLeverageに応じてRouteを調整することがあります。この判断がQBとWRで一致しなければ、パスは成立しません。
しかし、McCarthyはGiants加入から日が浅く、WR陣との反復練習も限られていました。
そのためこうした準備期間の短さが、認識のずれに影響した可能性はあります。
結果は成功でも、危険だった49ydパス
4Q残り5分54秒、McCarthyはCharlie Jonesへの49ydパスを成功させました。
結果はビッグプレーです。
しかし、ALL-22で見るとMalik Nabersが確実にオープンになっていたにもかかわらず、McCarthyはDefenderにカバーされたJonesを選択していました。
さらに、JonesへのパスはCB Quincy Rileyがボールに触れた後の捕球でした。
結果として49ydのゲインになりましたが、INTになっていても不思議ではないプレーでした。
最後の4th & 1:問題はQBの判断か、それともProgressionか?
もう一つ気になったのが、試合最後のプレーです。
4Q残り12秒、GiantsはNO陣14ydから4th & 1。
McCarthyはTE Isaiah Likelyへパスを投げましたが、Incompleteとなり、試合が終了しました。
All-22では、このときMalik NabersがEnd Zone中央で確実にオープンになっていました。
ここで考えたいのは、McCarthyがNabersを見落としたのか、それともProgressionの問題だったのかという点です。
実際のプレーでは、McCarthyはPressureを受けてPocketを崩され、Likelyへの投球を選択しています。そのため、Pressureによって本来のReadを最後まで実行できなかったという見方もできます。
一方、私がAll-22を確認した限り、Nabersが1st Readに設定されていたのであれば、Pressureが到達する前に投球できたと考えています。
ただ、もし仮にNabersがProgressionの後半に設定されていたなら、このプレーの失敗はQB個人の判断だけでは説明できません。
McCarthyへの評価が分かれた理由
McCarthyへの評価は、現地アメリカメディア内でも分かれていました。
元NFL QB Chase Daniel:限られた準備で途中出場し、攻撃を立て直した難しさを評価
元NFL WR Jarvis Landry:McCarthyがPressureから逃れ、崩れたプレーを大きなゲインへ変える能力に注目
Landryが重視したのは、単なるパスヤードではなく、Mobilityによって攻撃に新たな選択肢を加えられる点です。
元NFL QB Russell Wilson:McCarthyの可能性を認めながらも、経験豊富なWinstonにもう一度先発のチャンスを与える選択肢を示す
つまり、McCarthyのWeek 6の活躍自体を否定しているわけではなく、それだけで先発交代を決断すべきかという点で意見が分かれています。
Big Blue Viewの評価も一致していない
Giants専門メディアのBig Blue Viewでも、先発交代について複数の見解が紹介されています。
Chris Pflum:McCarthyのMobilityによって本来想定していたOffenseに近づけられる点を支持
Jeremy Brener:McCarthyの将来的な上限の高さに期待
Nick Falato:McCarthyのビッグプレーを高く評価しながらも、WRとのCommunicationやINTになりかけた投球を懸念
Tony Del Genio:Winstonのそれまでの貢献を踏まえ、1試合の不振で交代させることが選手たちにどう受け止められるかを問題提起
これはロッカールームへの悪影響が実際に起きたという報告ではなく、記者による懸念です。
参考:Big Blue View|McCarthy先発は正しい選択か?
こうして見ると、評価が分かれる理由は、見ている対象が違うからだと考えられます。
- Week 6で何を成し遂げたか
- QBとしてどれほど安定しているか
- チームの攻撃に何を加えられるか
私はGiantsが先発交代を決断した理由として、3つ目の視点が特に重要だと考えています。
McCarthyで攻撃はどう変わるのか?
Giantsはもともと、Jaxson Dartの機動力を生かしたOffenseを準備していました。
しかしDartの離脱後、Winstonが先発するようになり、QB Run Threatを活用できる攻撃の選択肢が限られていました。
確かに、WinstonにはPocketからパスで攻撃を進める能力があります。実際にWeek 5のWashington Commanders戦では、No-huddle Offenseを使って14点差を追いつきました。
一方、McCarthyにはWinstonとは異なる武器があります。
それがMobility、つまりQB自身がボールを持って走れる能力です。
Week 6でも、試合終盤に28ydのスクランブルを記録しました。
Nagy OCの説明
Matt Nagy OCは10月22日の会見で、McCarthyのスキルセットに合わせてOffenseを調整する必要があると説明しています。
その対象はRun Gameだけではありません。
Pass Game、Protection、Formation、Motion、Shiftなど、さまざまな要素が含まれます。
またNagyは、McCarthyがPlay Callを聞き、FormationやMotionを確認し、Play Clockやセンターとのコミュニケーションを管理するOperationについて高く評価しました。
一方、Giants加入から約4週間という短い準備期間の中で、McCarthyがOffenseのすべてを理解しているわけではないことも認めています。
プレーブックを理解することと、味方全員と同じ認識でプレーを実行することは、必ずしも同じではないからですね。
先発することでディフェンスの選択肢が増える
特定のSituationだけMcCarthyを起用すると、守備側はQB Runを予測しやすくなる可能性があります。
しかし、最初からMcCarthyが先発するなら、Pass PlayとQB Runを同じFormationから組み合わせる選択肢が生まれます。
Harbaugh HCも先発交代について、チームが最もよいOffenseを実行するための判断だと説明しています。
この発言から考えると、McCarthyの先発起用は、現時点でWinstonより完成されたQBだと判断したことだけを意味するわけではありません。
McCarthyを起用することで、Giantsが実行できる攻撃の選択肢が広がる。
ここに先発交代の戦術的に合理的な理由があると考えています。
McCarthyに残る課題
McCarthyの起用で攻撃の選択肢が広がる可能性はあります。
しかし、それだけでWeek 6で見えた課題が解決するわけではありません。
今回のAll-22では、特に次の3点が気になりました。
- Fieldsとの認識のずれが疑われたINT
- Nabersがオープンだった一方、INTの危険もあった49ydパス
- 最後の4th & 1におけるProgressionとPressureの関係
もちろん、McCarthyは短い準備期間での途中出場でした。
Nagyも、McCarthyが十分に反復練習できていない状況で、プレー前のOperationをこなしていたことを評価しています。
加えて、NOが24点リードした状況で比較的Softな守備を使用していた点も、McCarthyの成績を評価する際には考慮する必要があります。
一方で、そのような状況でもMcCarthyは難しいパスをいくつも成功させました。
たとえば、Isaiah Likelyへの24yd TDパスです。
したがって「相手がSoft Coverageだったから243ydを獲得できた」と単純に片付けることも適切ではありません。実際に勝負所ではSaintsのDefenceもプレッシャーをかけていました。
大切なのは、成功したプレーの質と失敗したプレーの原因をそれぞれ評価することだと思います。
McCarthyは先発練習を積むことで、WRとの連携を改善できる可能性があります。
当然、出場機会が増えるだけでDecision Makingの問題が自動的に解決するわけではありません。
ただ、McCarthyの今後を考えるうえでは、Mobilityによる戦術的な利点と、Pass Gameでの判断の安定性を両方確認する必要があると思います。
Week 7で見るべき3つのポイント
Week 7、GiantsはHouston Texansと対戦します。
HoustonにはWill Anderson Jr.とDanielle Hunterという優れたEdge Rusherがおり、McCarthyにとって厳しいテストになると予想されます。
私は、Week 6の243ydを再現できるかという数字だけでなく、次の3点に注目しています。
① QB Run ThreatがRBを助けるか
McCarthy自身のランヤードだけではなく、QB Keepの可能性によってEdge DefenderやLBの反応が変わるかを確認します。
その結果、RBのRun Laneが広がるかがポイントです。
② 通常のGame Situationで適切なReadができるか
Week 6に関しては24点差を追う特殊な状況でした。
しかし先発になれば、1st & 10や3rd & Mediumなど、さまざまなSituationで守備を読む必要があります。
最初のReadが消されたときに、McCarthyがどのような判断をするのかに注目したいです。
③ WRとの認識のずれが改善するか
Week 6で見られたFieldsとの認識のずれが疑われるプレー。
さらに、Nabersがオープンになっていたにもかかわらず投球できなかった場面。
1週間の先発練習を経て、こうした問題が改善されるかを確認したいと思います。
特にCommunicationは、QBだけでなくWR、TE、OL、コーチ陣全体の連携によって成立するものです。
おわりに
McCarthyの243ydは、途中出場として素晴らしい数字です。
短い準備期間でチームを24点差から追い上げたことも高く評価できます。
一方、All-22では、INT、危険な投球、ターゲット選択の課題も見えました。
それでもGiantsがMcCarthyを先発に選んだ理由は理解できます。
McCarthyのMobilityによって、Dartのために準備していたQB Runを含む攻撃の一部を、再び実行できる可能性があるからです。
選手個人の現在の完成度と、チームのScheme Fitは別の評価軸です。
正直、McCarthyにはまだ改善すべき課題が残っています。
しかし、走る能力やPocket外でのプレーによって、守備側に新たな問題を与えることができます。
今回の先発交代は、単なるQBの優劣だけではなく、GiantsがどのようなOffenseを実行したいのかという視点から考えてみると、面白いです。
Week 7では、McCarthyが243ydを再現できるかではなく、通常のGame Situationでどれだけ安定してOffenseを運営できるかに注目したいと思います。
それではまた、次回をお楽しみに。

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